以前から、Amazonに「○○を読んだ人へ『狼と香辛料』をおすすめします」と言われていた。
しかし、表紙からして獣耳だし、個人的には人外に手を出してはならんという一線があって、可愛らしい表紙なんだけどずっと見ないふりをしていた。
ところが、ここ最近の読書傾向からして、救われないお話が続き弱っていたわたしは、うっかり萌え要素に逃げてしまったわけだ。
中世西欧のような世界を舞台に、行商人ロレンスと獣の耳と尻尾をもった少女ホロの珍道中。
ホロは人ならざる者だが、 お話の中に一部ホロの持つ能力が出てくるだけで、基本的には現実世界を踏襲したお話だった。ファンタジー物が若干苦手なわたしは、魔法が出てこない世界は大変過ごしやすいところだった。
ロレンスはお金に目がない行商人ではあるが、根がいい人のせいで、素直に慣れなかったり、ホロも似たもの同士で歯車がズレながらも、そんな二人はいつしか惹かれ合い・・・、読者層をよく捉えて感情移入しやすい設定だと感じた。
序盤こそ、そういう設定にあざとさを感じたのだけど、魔法など想像しにくい設定で状況をひっくり返すようなことがなく、 納得の行くストーリー運びにがっつりと心をつかまれてしまった。
設定上、二人にはどうしても超えられない壁があった。しかし、登場人物たち自らその壁に向き合い、納得した上でその壁と付き合っていく様子が丁寧に描かれており、救いがない流れながらも読者を納得させられたのではないかと思う(それまでに読んだ作品により受けたダメージのせいもあるかもしれないが)。
作品世界から離れた今でも、二人ならその壁を乗り越えていけると信じることができる。抱いていた心配も登場人物たちに「ほら、わたしたちは大丈夫だから」と説得されてしまった。
久々に気持ちのよい読後だった。
基本的に1冊から2冊で話がまとまるので、読み易かった。短編集のSide Colorsも、その性質を利用して、旅の途中のひとときを切り取ったものとなっている。もっと、いろいろなひとときを見てみたい。しあわせであり続ける物語。ずっとしあわせであり続けたい。
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