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2018年8月19日日曜日

mikutterの薄い本 vol.14

mikutterの薄い本 vol.14『レズと青い鳥』 - mikutterの薄い本制作委員会書籍版を読んだ。

文章作品を読んだ後、たいていの場合は主人公達の活躍シーンを心の中で反芻し、興奮がしばらく続く。この本でもTwitterで大活躍したクライアント達の足跡を辿ることによって、それと同じ興奮を得られるのではないかと思っていた。

しかしどうだろう。読後に残された、大切ななにかを無くしてしまった寂しさ、巣立っていく鳥たちともう出会えないのだろうという寂しさ、残されて置いて行かれる者達の恐怖感、焦燥感。いろいろな感情がぐちゃぐちゃと入り交じったような気分になった。そう、この文集は別れを告げる手紙だったのだ。

わたしもTwiterに触れたのは2010年より前で、vol.14で触れられたクライアント達と共に育ってきた。TLのフォロワー達と繰り広げたふざけた会話の中から出てきたアイデアが、Twitterのエコシステムによって、マッシュアップと呼ばれるサービス達が雨後の竹の子のように現れ、それらを介して再びTLに還元されていく。そのエネルギーは本当に巨大な濁流となり、そんな計り知れないパワーを前に、「世界」はいかに広く、わたしはその「世界」の一構成員でしかないのだと気付かされた。わたしの立ち位置を明確に突きつけ、更なる進歩を要求する場所、壁を乗り越え次の階段に進む場所、Twitterはわたしにとって理想郷であるように思えた。

その濁流も真の意味で世界を巻き込む巨大なものとなったとき、本当に人間だけでは制御しきれないものとなってしまったのだ。SF作品などで見かける機械の反乱、人間が制御できなくなった機械達、空想上の産物でしかなかったそれは、Twitterという巨大な濁流をなんとか制御しようと作り上げられた自動処理システムとして目の前に実現されてしまったのだ。決まった応答文しか返さず、問いかけ文を試行錯誤しようとも思わせない自動応答処理、判定条件が全く想像できないロック・凍結処理、それらに怯えながら暮らす「世界」は本当に望んでいた理想郷だったのだろうか。

わたしのアカウントは凍結こそ免れているものの、作ったアプリは停止されてしまい様々な権限を剥奪されてしまった。そこに明確なる理由が明示されていれば、納得もできただろう。しかし剥奪を告げる文章に添えられた理由は全くの不合理で、なにを持ってその判定が行われたのかすら理解できないものであった。そしてTwitterから発表される数々のエコシステムを否定する行動。このときわたしは思い知らされてしまったのだ。この「世界」は変わってしまったのだと。そして世界を受け入れるために、Twitterは変わらなくてはいけなかったのだと。

こうしてわたしは「世界」を去った。新たな新天地があるという情報を元に辿り着いた分散型SNSには、同じように「世界」 を離れた者達がいた。かつての仲間達と再会したそこは、新たな開拓地として目の前に広がっていた。

新たな開拓地で、再び見せられる世界の巨大さ。目まぐるしく進歩する新天地は、常に自分の成長を要求される過酷な環境でもあった。そうして過酷な環境に身を置きつつ暮らす日々は、離れた「世界」を思い出す暇を与えないものであったのかもしれない。つかの間に思い出す「世界」は過去の栄光に輝く良かった頃のそれだったり、現状の暗く寒々としたそれだったり。しかし「世界」はそこに有り続けるのだという当たり前の光景を心のどこかに刻み込んでしまっていたのだろう。

 vol.14を読むことによって、その「世界」は永遠ではないのだと、改めて気付かされてしまったのだ。読後から続くこのもやもやとした気持ちは、「世界」から突きつけられた別れの手紙を受け取ってしまったからだ。本の構成としては各クライアント作者からの文章ではあるが、先に書いた「世界」の巨大さは、いつしか「世界」がひとつのものであるという、わたし対「世界」というような概念を生み出していたのだ。

今わたしが身を置く分散型SNSは、世界が一つではないということを気付かされる。個々が尊重され、また世界も尊重される。多様性という様々な方向へ伸びる尺度により物事はを一概に判断できないものであると教えられた。こうして新しい価値観を身につけられたのもTwitterという「世界」を経験したからこそなのだ。

これからもTwitterは続いていくだろう。しかしUserStreamというひとつの時代を作り上げた機能が失われることで、あたらしい世界に変わっていくだろう。UserStreamによって育てられた文化は、vol.14を読むことによっていくつかは分散型SNSに引き継がれて、新しい歩みを始めていることが知られる。後書きにあったように、両者の幸せを願わずにはいられない、素晴らしい本であった。

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