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暑ち。
思わず独り言も出る。
改札を抜け視線を右から左へ走らせると、ふっと目が合う。
「おーい」
右手を小さく振った彼女に、俺も手を軽く挙げる。
ごめん、待った?
「ううん、いま来たとこ」
んじゃ、早速行こっか
「うん」
二人横に並んで歩き出す。久しぶりに見た顔だけど、全然変わってない。
変わってへんなぁ。相変わらず白いし。
半袖のTシャツから伸びる腕を見ながら言う。
「いいよ、どうせ引きこもりだし」
いや、別にそういう意味で言ったんじゃないけど。
こっちを見ながら彼女が言う。
「変わってへんよ。相変わらず細いし」
あーはいはい、引きこもりですよー。
ふたりで笑い合いながら階段を下りる。
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「そんな感動せんでも…」
だって、こんな間近で見たことないし。
「いっつも車で来るもんな」
一番近くて竹田街道のとこからやけど、あんまり意識して見てないからな。
そうして駅前のバスターミナルまで出た。
俺、バスってほとんど乗らんから、バスターミナルとかようわからんねんけど。
「えー、行き先書いてあるやん」
でも京都ってバスめっちゃ走ってるやん。まあ大阪もやけど。なんか行き先同じやのに系統違ったり。
「どれか適当に乗ったら着くって」
そんなもんか?
目当ての系統を探し出し、それが来るバス停まで移動する。なんか、行列。
いっぱいおるなぁ。
「他の系統の人もいるから、わからんけど」
やがてやってきたバスは、別の行き先…。横へ避けつつ、列になっていた乗客達はバスに乗り込んでいく。
残ったおばさんと、部活動らしい学生と、おじいさんと彼女を見つつ。
充分座れそうやな。
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昔、小さいときに家族で行った覚えはあるんやけどな。
「そうなんや。実はわたし初めて」
えー、ガイドちゃうの?期待してたのに。
「わたしより詳しいとか」
いや、覚えがあるだけで、他は全然しらん。
「思い出せー」
ま、遭難せん程度に。
「あはは、そんなに山奥へ分け入るの」
思わず川口浩探検隊を思い浮かべつつ、俺も笑う。
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「座ろ、座ろ」
二人して並ぶ。よっぽど景色がいいようだ。
紅葉の季節なんかに来ると、もっと楽しめるかもしれない。
まもなくして電車が動き出す。
いいなあ、なんかのんびりしてて。
「そやねぇ」
しかし、電車はまだまだ街の中。住宅街、広い通りの踏切を越えていく。
晒し者っぽいな。
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「だいぶ山が見えてきたね」
赤くなっても綺麗やろうな。
「紅葉狩りしに来たい」
やがて線路も単線になり、降りる乗客も少なくなってきた。
周りは観光客らしい人たちばかり。
目的の駅に着いて、降りる人たちはだいたい半分。
駅前と言っても、ごく普通の山道に出たような感じで、広いとは言えない舗装された道が、上と下にそれぞれ伸びている。
バス停もあったけど、こんなところで一体いつバスが来るのやら。
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そう言ってふたりで上に向かって歩き出す。
京都駅に降り立ったときの蒸し暑さはなく、からっとした晴れ間に木々の陰。
「よかった晴れてて」
天気予報じゃ、もっと暑くなるみたいなこと言ってたわ。
彼女は手をだらんと前に垂らして、しんどそうに歩く。
「まじでー」
俺はちょっとしたハイキング気分で上っていく。沿うようにして流れている沢に目を向け、耳を傾けつつ。
あ、ほら、亀おる。
「ん。ほんまや」
気持ちよさそう。
「泳いできたら?」
まだいい。ていうか、疲れてきた?
「ちょっと」
受け答えでなんとなく分かる。
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床が出してある。
「涼しそう」
旅館が建ち並び始め、昼間は観光客向けに食事処もやってるようだ。
まだお昼には少し早かったので、先にのぼってしまうことにする。
細いと思っていた道だが、意外と交通量が多い。
なんか大型バスとかも連なってくるし。
でっかいホテルでも建ってるんかな。
「さあ、そんな見るところあるんかな」
合掌造りの白川郷へ行ったときも、集落の中をバスが行き交い、趣もなんもあったもんじゃなかったのを思い出す。
ごみごみしてたら嫌やなぁ。
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観光バスは少し下の方の駐車場で止められていた。
平日のわりには結構人居るな。
「おばさんが多いね」
うん、一応女性ではあるな。
「別に貴船神社だからって、縁だけを求めてくるんじゃないやろう」
まあ、そうやろうけど。ちょっとぐらいは期待してるんじゃないの?
「あんたもかー」
いやいや、俺は今日は取材のつもりだし。
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「何千段とかあったら嫌やな」
ここまで来て、それは参るな。
灯籠のあいだを抜けて石段を上がっていく。
早く、早く巫女さんに。
「それかー、そっちが目的かー」
俺的には巫女萌えではないんやけど、一応。
「なんや、その一応って」
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うん。
「やっと巫女さんに会えるね」
いや、主目的じゃないから。
「何番目ぐらい?」
二番目ぐらい。
「ほとんど主目的やん」
手水舎で手を清める。
「冷たくて気持ちいい」
![](http://www.osa-p.net/image/diary/2002/ojmPIC00032s.jpg)
賽銭を入れて鈴を鳴らす。
・・・・・。
なにお願いしたん?
「秘密」
やっぱり貴船神社らしいお願い?
「ま、そんなとこ。あんまり言ったら御利益無くなるとか、なかった?」
さあ、わからんけど。
「じゃあそっちこそどうなん」
秘密。
「ご縁があるように五円玉入れてた」
細かいとこ見てるなぁ。
「あはは、お互いご縁が有りますようにってことで」
うん、ご縁があるといいねぇ。
特にお守りとかも買うこともなく、社務所の前を通り過ぎる。
「巫女さんとの縁はなかったね」
えらい食いつくなぁ。
「巫女さん萌え?」
だから巫女萌えじゃないって。
「ふーん」
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うわ、晴れてるのに。
「狐の嫁入りや」
なんと縁起のいい。
お昼を食べるついでに近くの店に逃げ込む。
雨が上がると、再び山道を下る。
観光バスが止まっているところで、路線バスを待つ人たちの列。
「どうする?乗っていく?」
うーん、いつ来るかわからんし。そんなに時間かからんかったやん。
三分の一ほど下ったところで、下から路線バスが上がってくる。
もうちょっと待っとけばよかったかなぁ。
三分の二ほど下ったところで、折り返してきたバスに抜かれる。
まあ、運動できたし。
「うん、バスめっちゃ混んでるし」
山道用の小さなバスだったため、結構立ち客も居るようだ。
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あー、疲れた。
明日、足痛くなってるかも。
「若くないしな」
ほっといてくれ。
「年取りたくないー」
若々しいしいいやん。
「なんとか、頑張ってます」
あはは。充分充分。
やがてやってきた下り方向の電車にのって山をあとにした…。
…つづく…んなわきゃねぇ!!!
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